top of page

Docu Athanについて

「Docu Athan」は、ミャンマー人のクリエイター(ジャーナリスト/映像制作者/アーティストなど)を支援するためのオンラインプラットフォームです。アッタンはミャンマー語で(声・意見)などの意味があります。私たち視聴者が「アッタン」を購入することで、クリエイターは新たな作品作りの資金とすることができます。

 このプロジェクトは、ミャンマーで拘束された2人の日本人、ジャーナリストの北角裕樹とドキュメンタリー作家の久保田徹の発案から生まれました。2人は自分たちが解放された後も、ミャンマーの友人たちが苦境にあることに対してできることは何かを考えた末に、仲間と共に立ち上げました。

 ミャンマーの作品を日本に紹介するとともに、ミャンマーのクリエイターたちの制作を支えることで、多くのクリエイターが集う場としての役割を果たすことも目的のひとつです。活動の場が広がり、日本からの声が伝わることで、新たな制作意欲につなげる狙いもあります。

プロジェクトは、久保田徹が参画し、彼の拘束中に解放運動を展開した制作者集団DOCUMEME(ドキュミーム)のサポートを受けています。立ち上げにあたっては、イラストレーターや広報の専門家、キュレーターら多くの有志に支えられています。

発起人

kitazumi.jpg

北角裕樹

  • さえずり
  • フェイスブック

クーデター後のミャンマーで取材活動中、多くの人に助けられました。国軍が近づいてくるのを撮影中スナイパーの銃撃から避けるため私の前に盾をかざしてくれた住民、不審者がいると知らせてくれる隣人、私が拘束される様子をひそかに撮影しメディアに知らせてくれた友人たちです。それは彼らが、私に「自分たちの声を世界に伝えてほしい」と思っていたからです。

その声を伝え、声を発する役割を果たすべきジャーナリストたちが、ミャンマーでは苦境にあります。私が何度も目にしたミャンマー人が助け合う精神を、このプロジェクトで発揮できればと思っています。今回、多くの仲間とともに、ミャンマーの友人と支え、ともに作品を作っていくプロジェクトが始められたことをとてもうれしく思います。そしてまた新たな仲間と出会えることを楽しみにしています。

kubota.jpeg

久保田徹

  • さえずり
  • フェイスブック

ミャンマーで起きている現実を鋭い視点から伝え続けている人々がいます。彼らは自分たちが大変な状況にあっても、作ることをやめません。

2022年7月30日、私はミャンマーのヤンゴンにてデモの撮影中に拘束され、およそ3ヶ月半の間インセイン刑務所で過ごしました。獄中では、「帰ってもミャンマーのために活動してくれ」と三本指を見せてきた政治犯たちのことを覚えています。彼らとの約束を果たすため、まずは自分と同じ「伝える立場」にあるミャンマー人クリエイターを応援し、彼らが継続的な制作を行えるような仕組みを作ることから始めようと思いました。

私が獄中で書いた手記を見返すと、「ミャンマー人と協力して、映像コミュニティを作れないだろうか」「帰ったらミャンマーのために本気で活動しようと思う」と書いてありました。いつ解放されるかは見当もつかない生活でしたが、いま自由の身になってこのプロジェクトを実現することができて嬉しく思います。

Docu Athan プロジェクトメンバー

イラスト:加藤玲

ウェブデザイン:塚原七愛 今井直也

ディレクション協力:居原田遥

広報:臼井健太

運営協力:木村彩乃、中山美嶺

映像翻訳:林里穂

DocuMeme:内山直樹、松井至、久保田徹

ミャンマーのクリエイターについて

2021年2月1日未明、ミャンマーで国軍によるクーデターが起き、政権トップのアウンサンスーチー国家顧問ら政府高官が次々と拘束されました。このことはミャンマー市民に衝撃を与え、彼らを絶望の淵に突き落としました。そして市民らは大規模な抗議活動を始めます。

2月の下旬には全国で数百万人に達したとも言われる抗議活動には、学生や公務員、教師、医師、労働者ら幅広い層が参加しますが、中でもジャーナリストや芸術家などのクリエイターの活動は目立っていました。記者はヘルメットと防弾チョッキを身に着け記録を続けました。普段はフィクションを撮っていた映画人が、カメラを持ってデモ弾圧の最前線の映像を撮り続けました。画家は絵を描いて売り、その資金でゼネストに突入した公務員を支援しました。舞踏家は革命歌をバックにトラックの上で踊り市民を鼓舞しました。詩人は大通りで詩を朗読して声をあげました。ネット上では、漫画家やイラストレーターが抗議のイラストを投稿しつづけました。

IMG_2561.JPG
IMG_4125.JPG

しかし、2月下旬から3月にかけ、国軍が自動小銃やロケット砲まで使用した大規模な弾圧に乗り出します。表立った活動はできなくなり、多くのジャーナリストや芸術家は地下に潜り、または国境を越えて海外に逃れました。そして、いまでも製作を続けています。その作品の多くは、独裁に反対するメッセージや、市民の気持ちを代弁するものとなっています。

どうして彼らは、危険を冒して抵抗を続けるのでしょうか。その背景には、共通の記憶があります。この国は、半世紀にも及ぶ軍事独裁体制が続いたのちの2011年に民政移管を果たします。その後2015年には、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)政権が総選挙に勝利し政権の座につきます。

民政移管以降の表現の自由が拡大した10年の間、クリエイターたちは新しい時代を迎えていました。日刊紙や雑誌が相次いで創刊され、民放テレビ局が次々と誕生し、映画界には海外からの共同制作の企画が次々と舞い込みました。芸術家の作品は海外に紹介され、国際的な展示会に出品し、国際的マーケットへの扉が開かれました。自分たちがこれまでできなかったことを今こそ表現しようという活気に満ちていました。

この10年間の記憶から、この国のクリエイターたちは、自由の尊さを身をもって知っています。まさに、この自由は彼らの未来そのものでした。彼らは自分たちの未来を再び取り戻すため、クーデターに反対の声をあげています。

ルミン・アウンサン映画.JPG

ルミン・アウンサン映画

そのジャーナリストや芸術家たちは、いま苦境にあります。国境地帯に逃れた映画監督、戦火に追われて国境を越えた映像作家、内戦で足を失っても再び現地に赴き撮影を続ける写真家、勤務先が弾圧され収入が途絶えても無償で記事を書き続ける記者、国内を転々としながら風刺漫画を描いたアニメーター、戦火の中で立ち上がる女性たちを記録する記者、獄中で描いたスケッチをひそかに持ち出して監獄の現実を訴える画家…。

彼らはいま、支援を必要としています。発表の場を求めています。また、絶望から立ち上がる声援を必要としているのです。

bottom of page